複数のパソコンを使って作業をする際、それぞれのマウスやキーボードに切り替える、あるいは使用するのはかなり面倒です。
「机の上がケーブルだらけ」「作業が分断されて効率が悪い」
そんな弊害もあります。
そこで今回は、無料で使えるMicrosoftのツール「Mouse Without Borders(マウス・ウィズアウト・ボーダーズ)」を使って、2台以上のパソコンを1組のキーボードとマウスでシームレスに操作する方法を紹介します。
インストールから設定、使い方のコツまで、最新情報を交えて詳しく解説していきます。
Mouse Without Bordersとは?複数PCをつなぐ無料ツール
この章では、Mouse Without Bordersの概要と、その仕組みや利用シーンを紹介します。
複数のパソコンを効率よく使いたい方にとって、なぜこのツールが選ばれているのかを理解することができるでしょう。
Mouse Without Bordersの基本機能と仕組み
Mouse Without Bordersは、Microsoft Garageプロジェクトの一環として開発されたWindows向けツールです。
1組のキーボードとマウスで、最大4台までのWindowsパソコンを同時に操作できるようにするソフトウェアで、物理的なケーブルを用いず、Wi-FiやLAN経由でデバイスを接続します。
カーソルが画面の端を越えると、まるでマルチディスプレイのように隣のPC画面へ移動し、入力も違和感なく可能なのが最大の特徴です。
さらに、クリップボードやファイルの共有にも対応しており、作業の効率を大きく高めてくれます。
どんな場面で役立つのか?具体的な活用例
以下のようなシチュエーションで、Mouse Without Bordersの導入は非常に有効です。
- 在宅ワークで業務用と個人用パソコンを使い分けている
- ノートPCとデスクトップを同時に使っている
- プログラミングや動画編集などで複数端末を同時に操作したい
- 株式投資やFX取引で、監視用と操作用のパソコンを分けている
これらの場面では、マウスやキーボードの切り替え操作が頻発しがちです。
そのたびに接続や手の移動が発生するのでは、作業効率も集中力も落ちてしまいます。
Mouse Without Bordersを導入することで、操作の一元化と快適なデバイス間の行き来が可能になります。
他ツールとの比較で見える優位性
他にも複数PC操作ツールとして「Synergy」「Barrier」などがありますが、Mouse Without Bordersには以下のような特徴があります。
- Windows専用に最適化されている(Windows環境であれば導入が簡単)
- Microsoft公式ツールであることによる安心感と安定性
- 完全無料で使用できる
特に、ソフトウェアの導入や設定に不安がある方にとって、「Microsoft公式」「日本語にも対応」「シンプルな操作感」は大きな安心材料です。
他ツールのようにマルチOS対応ではないものの、Windowsユーザーであれば第一選択肢として十分すぎる性能を持っています。
Mouse Without Bordersのインストール手順と初期設定
この章では、Mouse Without Bordersのダウンロードからインストール、そして初期設定までの具体的な流れを解説します。
初めて使う方でも迷わないように、画像とあわせて順を追って説明していきます。
ダウンロード:公式サイトから最新バージョンを入手
Mouse Without Bordersは、Microsoftが提供する公式ダウンロードページから入手できます。
以下のリンクからアクセスしてください。
Download Microsoft Garage Mouse without Borders
現在でも2024年リリースのバージョン2.2.1.327が最新であり、安定性も高く問題なく動作します。
英語表記ですので、ここから画像付きでの設定(操作自体は直感的に理解できるUI)をお伝えします。
複数のパソコンで利用するため、すべての端末にインストーラーをダウンロードしてください。
ファイルの共有にはOneDriveやGoogleドライブなどを活用すると効率的です。
※以降の画像は、少々古い時期でのキャプチャです。現在と異なって変わっている可能性があります。ご了承ください。
インストール:まずはメインPCから開始
インストーラー(拡張子 .msi)をダブルクリックし、ウィザード形式の画面に従って進めます。
ユーザーアカウント制御のポップアップが出たら「はい」を選んでください。
規約に同意するチェックを入れて「Install」を押すと、インストールが開始されます。
インストール完了後、初回起動時に「このPCが最初か?」と尋ねられる画面が表示されます。
メインパソコンである場合は「No」を選び、後ほど表示されるセキュリティコードとコンピューター名を控えておきましょう。
2台目以降のサブPCにインストール
続いて、操作対象となる2台目以降のPCにも同様の手順でインストールを行います。
インストール後の初回起動時には、先ほどとは逆に「Yes」を選択します。
ここで、1台目のセキュリティコードとコンピューター名を入力し、「LINK」ボタンをクリックします。
接続に成功すると、共有設定が完了したことを示す画面が表示されます。
この状態でマウスカーソルやキーボード操作がシームレスに移動できるようになります。
このように、基本的な設定は非常にシンプルで、特別な知識がなくても導入可能です。
初期設定さえ済ませれば、2台以上のPCをまたぐ操作環境がすぐに整います。
Mouse Without Bordersのレイアウトと共有設定の活用法
この章では、複数台のパソコンをどのようにレイアウトし、Mouse Without Bordersで共有設定を行うかについて解説します。
配置の工夫やカーソルの移動ルール、最大接続台数など、使い勝手を向上させるためのヒントを紹介します。
最大4台までのパソコンを1組のマウスとキーボードで操作可能
Mouse Without Bordersは、最大4台までのWindowsパソコンを1つのマウス・キーボードで操作可能です。
この機能により、メインパソコンを中心にサブPCを並べ、あたかもマルチディスプレイのように横断的な操作が実現できます。
接続台数の増加により、それぞれの役割を明確に分けた作業も快適に行えるようになります。
たとえば以下のような構成が可能です。
- 中央:メイン作業用PC(執筆・編集)
- 左側:資料表示用PC(ブラウザやPDF)
- 右側:チャットツールやSNS表示用PC
- さらに1台:検証用の仮想環境PC
このように役割分担をしながら、すべての操作を1組の入力機器で統一できるのが最大の魅力です。
レイアウトはドラッグで自由に配置変更が可能
Mouse Without Bordersでは、各パソコンの仮想的な配置を視覚的に管理画面から設定できます。
ドラッグアンドドロップで上下左右の位置を自由に変更できるため、実際の物理的なパソコンの並びと一致させることができます。
上図のように、カーソルが画面の端を越えると、隣接するパソコンへ移動する仕組みです。
違和感のないカーソルの動きが、作業効率と集中力を保つうえで重要です。
縦並びにも対応:Two Rowオプションで柔軟に表示
パソコンの配置が上下2段になっている場合でも安心です。
設定画面左下の「Two Row」にチェックを入れることで、縦2台×横2台のような構成にも対応できます。
カーソルは上下左右のいずれの方向にもシームレスに移動できるため、机上レイアウトが縦型であってもスムーズな操作が可能です。
タブレット端末や小型ノートPCなどを縦方向に並べて作業する人にも適した機能と言えるでしょう。
設定の保存と変更:状況に応じたレイアウト調整も容易
Mouse Without Bordersでは、一度設定したレイアウトは自動保存され、次回以降も維持されます。
出張先や別の作業環境でパソコンの配置が変わった場合でも、簡単に設定画面から再調整が可能です。
設定ファイルのエクスポート・インポート機能こそありませんが、レイアウトの視覚化により操作も直感的です。
特に複数人で同じ共有環境を使う場合は、パソコンの物理配置を変えるたびにドラッグ調整だけで済むのは便利です。
カーソル移動の挙動も細かく制御可能
共有操作で最もストレスを感じやすいのが、意図しないカーソル移動です。
Mouse Without Bordersでは、カーソルがどの方向に移動できるか、スクリーン端で止めるかどうかなどの挙動も細かく設定できます。
高度な設定でMouse Without Bordersをさらに快適に使う
この章では、Mouse Without Bordersの管理画面にある「Other Options」タブの詳細設定項目について解説します。
これらを理解し調整することで、さらに快適で自分に合った操作環境を構築できます。
管理画面へのアクセスと設定タブの位置
Mouse Without Bordersを起動した状態で、タスクバーのアイコンを右クリックし、「Settings」を開くと設定画面が表示されます。
ここでは「Machine Setup」「Other Options」など複数のタブがありますが、今回は主に「Other Options」タブに注目します。
以下、各設定項目をわかりやすく日本語で紹介し、実際にどのような効果があるのかを説明していきます。
主要な設定項目とその効果
- Wrap Mouse
横並びのレイアウトで端のパソコンから反対側のパソコンへ、中央を経由せずにカーソル移動が可能になります。3台構成で両端を行き来したい人には必須の設定です。 - Share Clipboard
すべてのパソコン間でクリップボード(コピー・ペースト)を共有します。テキストだけでなく、画像やスクリーンショットの共有も可能で、生産性向上に直結します。 - Hide logo from Logon Screen
Windowsのログオン画面に表示されるMouse Without Bordersのロゴを非表示にします。見た目をすっきりさせたい人向けです。 - Hide mouse at screen edge
サブPCにカーソルを移動させた際に、メインPC側でマウスカーソルを非表示にする設定です。二重表示を避けたい場合に便利です。 - Draw mouse cursor
マウスカーソルを強制的に表示するかどうかの設定ですが、通常の使用では変更不要です。 - Validate remote machine IP Address
相手PCのIPアドレスを検証し、通信の信頼性を確認します。セキュリティ重視の環境でオンにするとよいでしょう。 - Same subnet only
同一ネットワーク内(同一サブネット)のパソコンのみを許可する制限です。意図しないPCとの接続を避けることができます。 - Disable CAD
Ctrl + Alt + Del を無効化する設定です。誤操作を防ぐ目的で使用されますが、通常はオフで問題ありません。 - Block Screen Saver on other machines
他のPCでスクリーンセーバーが起動しないようにブロックします。マルチPC作業時の集中力維持に有効です。 - Move mouse relatively
マウス移動の座標を相対的に処理します。カーソルの感覚が合わない場合にオンにすることで調整可能ですが、違和感がなければデフォルトのままでOKです。 - Block mouse at screen corners
画面の四隅でマウスを停止させる設定です。誤ってPCを切り替えてしまうのを防ぐことができます。 - Use Key Mappings
キー入力のマッピングを制御する機能です。ゲームなど特定の操作を共有しないようにしたい場合に有効ですが、上級者向けの設定です。 - Send error log
Microsoftにエラーログを送信するかどうかの設定です。問題がなければオフにしても構いません。
おすすめの初期設定パターン
初心者にとって最もバランスが良い設定パターンは以下のとおりです。
- Wrap Mouse:オン(画面の端から端へ移動可能)
- Share Clipboard:オン(コピー・ペースト共有)
- Block Screen Saver on other machines:オン(作業継続を邪魔しない)
- Other項目:基本はデフォルトのまま
これだけでも操作性と快適さは大きく変わります。
設定を変えるタイミングと注意点
Mouse Without Bordersの設定は、ネットワーク環境や使用用途に応じて変更すべきポイントがあります。
たとえばVPN接続時やホテルのWi-Fi環境下では、「Same subnet only」をオフにしないと通信がブロックされる可能性もあります。
また、意図しないマウス挙動やコピペ不具合を感じた場合には「Wrap Mouse」や「Share Clipboard」の切り替えが効果的です。
Mouse Without Bordersを使うメリットと作業効率化事例
この章では、Mouse Without Bordersを実際に導入して得られるメリットや、複数台のパソコンをシームレスに操作することで得られる作業効率アップの実例を紹介します。
単なる便利ツールにとどまらない、業務改善の可能性に注目してみましょう。
最大の利点は「作業の一元化」
Mouse Without Bordersの最大のメリットは、物理的に別々のパソコンであっても、1台のように扱える操作感にあります。
マウスカーソルが複数画面をスムーズに行き来し、キーボード入力も連動するため、煩わしい切替操作が不要になります。
たとえば以下のような場面でその威力が発揮されます。
- 1台でZoom会議、別のPCで議事録を作成
- メインPCで原稿を執筆しながら、サブPCで資料や画像を表示
- 動画編集作業中、別端末でプレビューやSNS投稿の確認
これらの作業を1つのデバイスで切り替えながら行うと、ウィンドウの移動や開閉、メモリの負荷などが大きくなります。
その結果、集中力が分断されやすくなり、思考の流れも断ち切られてしまうのです。
Mouse Without Bordersを導入すれば、それらの手間がなくなり、結果的に「仕事の流れが止まらない」環境を実現できます。
クリップボードの共有で無駄を削減
Mouse Without Bordersの強力な機能のひとつが「クリップボードの共有」です。
これは単に「コピペできる」だけではなく、マルチデバイスでの情報連携を格段に効率化してくれる仕組みです。
具体的には以下のような活用ができます。
- 画像編集用PCで加工したバナーを、メインPCへそのまま貼り付け
- 調査中のURLを、別端末のブラウザにペーストして即表示
- スマホ連携ソフトでスクショを取り、それをPC間で貼り付けて共有
これまではUSBメモリやクラウドを介していた作業が、すべて「コピー&ペースト」で済むようになります。
特にWeb制作やライティングのように、複数のツールや画面を行き来する職種にとっては、作業効率に大きな違いが生まれます。
マルチPC体制によるトラブル回避と作業分散
パソコンを複数使うメリットのひとつに、「負荷分散」があります。
動画編集や仮想環境の利用、同時にブラウザで10個以上のタブを開くような重い作業を1台のPCに集約すると、フリーズやクラッシュの原因になります。
しかし、Mouse Without Bordersを導入すれば、操作系は1つに集約しながら、処理系はそれぞれのパソコンに分散することができます。
これにより、業務の安定性が向上するだけでなく、万が一のトラブル発生時にも別PCから対応を継続できる「保険」としての役割も果たします。
ブロガー・ライター・デイトレーダーに最適
複数パソコン運用が有効な職種として、次のようなケースが挙げられます。
- ブロガー・ライター:参考資料や画像検索、記事投稿画面などを分けて表示することでスムーズな作業が可能
- デザイナー・動画編集者:プレビュー画面と編集画面を別PCに配置することで動作の安定化が期待できる
- 株・FXトレーダー:リアルタイムチャート、取引画面、ニュースフィードを分離してモニタリングしやすくなる
これらのユーザーは、特に「ながら作業」「即応性」「マルチタスク」に対応する必要があり、Mouse Without Bordersの導入による恩恵が非常に大きくなります。
実体験:3台のノートPCを同時に使った効率化
筆者自身、3台のノートPCを使って作業をしています。
もともとはメインPCでライティング、サブ1で画像加工、サブ2で参考資料を開くという使い方でしたが、それぞれが独立していたため操作に手間がかかっていました。
Mouse Without Bordersを導入してからは、メインのマウスとキーボードだけで全端末を制御できるようになり、明らかに手の動きと作業切り替えのスピードが向上しました。
特に資料コピペやファイル移動の手間が大幅に減り、「1時間の作業が40分で終わる」ほどの体感です。
実際の作業時間はその日の内容によりますが、「無駄な操作」がなくなったことが大きなストレス削減につながりました。
まとめ
Mouse Without Bordersは、複数のWindowsパソコンを1組のマウスとキーボードでシームレスに操作できる、非常に実用性の高い無料ツールです。
導入も簡単で、レイアウト調整やクリップボード共有といった便利な機能が豊富にそろっており、在宅ワークや副業、多端末環境での作業効率を大きく改善できます。
特にブロガー、クリエイター、投資家のような複数画面を活用する職種にとっては、生産性向上の強い味方になるでしょう。
物理的なデバイスに縛られない快適な作業環境を、Mouse Without Bordersでぜひ体感してみてください。