検索エンジンは文字だけでなく画像・音声・動画など、あらゆる情報を理解できるようになっています。これが「マルチモーダル検索」と呼ばれる新しい検索のかたちです。
たとえばカメラで撮影した植物の写真から名前を調べたり、スマートスピーカーに話しかけてレシピを検索したり。これらはすべてAIが見る・聞く・読む能力を組み合わせて実現しています。
本記事ではマルチモーダル検索の仕組みとSEOへの影響、AI時代に求められる最適化の方向性をわかりやすく解説します。
マルチモーダル検索はAIが情報を見て・聞いて・読む
マルチモーダル検索とはAIが複数の情報形式(モード)を組み合わせて理解・判断する検索技術のことです。従来の検索はテキスト中心でしたが、現在では画像・音声・動画・テキストを横断的に処理する方向に進化しています。
たとえばGoogle Lensで撮影した写真をもとに商品情報を検索したり、ChatGPTやGeminiで画像+テキストを同時に解析して回答を得たりするわけですが、これらすべてがマルチモーダル技術の応用例です。
AIが理解するモーダルとは?
モーダルとはAIが入力情報を認識する際の感覚のチャンネルを指します。人間に例えると視覚・聴覚・言語のようなものです。AIはこの複数のモードを組み合わせて人間に近い理解力を発揮します。
テキスト(言語)だけでなく画像の特徴や音声のトーン、動画の動きまでを統合的に処理するため文脈を持った理解が可能になります。このしくみによってAIは単語ではなく意味で検索できるようになりました。
Google Lens・Bing Visual Search・Geminiなどの事例
Google Lensはスマートフォンのカメラを使ってリアルな世界から情報を取得できるツールです。たとえば観光地の建物を撮影すればその名称と歴史を即座に表示し、洋服の写真を撮れば似たアイテムの通販ページを提示します。
Bingの「Visual Search」も同様に、画像そのものを検索クエリとして扱う仕組みを採用しています。さらにGemini(旧Bard)も画像・音声・テキストを同時に理解して会話形式で回答を生成できるようになっています。
よって検索は「入力=文字情報を読む」だけではなく、「入力=視覚・聴覚も使える」よう進化したといえます。
なぜマルチモーダル化が進んでいるのか
マルチモーダル検索が急速に広まっている理由は、ユーザー体験の変化とAIの性能向上にあります。
ユーザー側としては「検索の手間を減らしたい」「より直感的に知りたい」というニーズがあります。説明できない花の名前を言葉で検索するより写真を撮って見せたほうが早くて正確な回答が得られるのは明らかです。
AI側も技術の進化により画像認識・音声解析・自然言語処理(NLP)が統合的に行えるようになった点も大きな影響があります。特にGoogle Geminiは複数のモードを同時に処理できるマルチモーダルAIとしての進化は凄まじいものがあります。
今の検索体験は「文字を打ち込む行為」から「AIに状況を伝えて理解してもらう行為」へと変わりつつあります。
マルチモーダル検索がもたらす変化
AIの技術革新により検索はより人間らしい行動に近づきました。画像で探す、あるいは声で質問するとAIが要約して答える流れが自然な時代です。
そうなるとウェブメディアにとってテキストSEOだけでは不十分であり、画像・音声・動画などあらゆる情報形式を検索される資産として認識しての改善が重要になってきます。これがAI時代におけるマルチモーダル最適化の出発点です。
マルチモーダル検索の具体的な利用シーン
マルチモーダル検索おいて画像・音声・動画といったさまざまな形式が、どのように検索に活用されているかを具体的に見ていきましょう。
画像検索「Visual Search」活用例
画像検索はマルチモーダル検索の中でも最も身近な機能です。たとえばGoogle Lensを使えばカフェで見かけたスイーツを撮影するだけで商品名や販売店、レシピまで調べられます。
ファッションやインテリアなどの分野では似ている商品を探す視覚検索が当たり前になっています。PinterestやBing Visual Searchでは画像の一部を指定して似たアイテムを探せます。
こうしたVisual Searchの仕組みでは画像そのものの内容に加えて、Alt属性・キャプション・周辺テキストといった文脈情報が重要です。AIは画像だけを見ているわけではなく、その画像が「どんなページで」「どんな説明の中に」配置されているかを総合的に判断しています。
したがって画像SEOでは単なるファイル名の最適化ではなく、「画像+説明+位置関係」を意識したコンテンツ設計が欠かせません。
音声検索:話しかけるように探す時代
スマートスピーカーやスマートフォンの音声アシスタントを使って「近くのカフェを教えて」「明日の天気は?」と尋ねる方法もマルチモーダル検索の一形態です。音声入力は検索キーワードというより会話として処理されます。
音声検索では文章よりも自然な言い回しが多いため、コンテンツ側でも話し言葉に近い表現を取り入れると効果的です。たとえば「ダイエット 食事」よりも「ダイエット中に食べていいものは?」という質問形式の見出しにすると音声検索やChatGPT型検索でも拾われやすくなります。
また音声検索はローカルSEO(地域情報)と相性がよく、位置情報を含む質問に対してはAIが最寄りの店舗情報を優先的に提示します。したがって店舗ビジネスでは「Googleビジネスプロフィール」や構造化データによる地域情報の明示が不可欠です。
動画検索:AIが映像内容を理解する時代
YouTubeをはじめとする動画検索も今やAIによって内容理解が進んでいます。Googleは動画内の音声を自動で文字起こしして字幕やキャプションの内容をインデックス化しています。
そのため動画SEOではタイトルや概要欄だけでなく字幕・文字起こしデータ(transcript)も重要な検索要素です。AIはこのテキスト情報を基に動画のテーマや関連性を判断しています。
また最近ではChatGPTやGeminiが動画を分析し、特定のシーンや話題を直接引用して回答を生成する事例も増えています。動画の中で「キーワード」「トピック」を明示しておくとAIの理解を助ける意味でも有効です。
AR・リアルワールド検索の発展
AR(拡張現実)技術を活用した検索もマルチモーダル検索の延長線上にあります。Google MapsやLensではスマートフォンのカメラを通して街を歩くと、店舗情報や口コミ、営業時間などがリアルタイムで表示されます。
このようなリアル空間検索では位置情報・画像情報・テキスト情報がすべて連動しています。AIは空間そのものを理解しようとし、将来的には街中の看板や商品棚が「AIに読まれるコンテンツ」になる可能性も否定できない気がしています。
マルチモーダル検索の広がりと課題
マルチモーダル検索の普及は利便性を高める一方で新しい課題も生み出しています。たとえば画像の著作権や生成AIによる誤認識、音声データのプライバシーなど倫理面です。
その一方でユーザーは検索の多様な入り口を手に入れ、言葉がわからなくても写真を撮るだけで翻訳・検索できるため、AIが言語の壁を越えて人々の知識アクセスを支援している証ともいえます。
ただ倫理面を蔑ろにしてまで検索する行為は、個人の自制にゆだねられているという点は、非常に大きな問題なのかもしれません。
マルチモーダル検索は単なる技術の進化ではなく情報の探し方と意識そのものを変える社会的な潮流ともいえます。
SEOへの影響:マルチモーダル時代の評価軸
マルチモーダル検索の進化はSEOの評価基準にも大きな影響を与えています。従来のSEOがテキスト中心だったのに対し、今後はAIが理解できるすべての情報形式が評価対象になります。画像・音声・動画の最適化は補助的な要素ではなく、検索上位を狙うための重要な戦略に変わりつつあります。
画像の文脈理解とAlt属性の再評価
かつての画像SEOはファイル名やAlt属性(代替テキスト)を最適化する程度で十分でしたが、AIが画像そのものを理解できるようになるとAlt属性はAIに文脈を教えるメタ情報として意味を持つようになります。
AIは画像を単体で処理するのではなく、その前後のテキストやキャプション、周囲のコンテンツとの関係性を分析しています。つまりAlt属性には単なる説明ではなく「この画像が何のために存在しているのか」を明確に伝える役割を持たせる必要性があります。
悪い例としては「IMG_001.jpg」や「image.jpg」といった機械的な命名で、良い例は「新築一戸建て 外観 モダンデザイン」など検索意図を反映した表現です。Googleはコンテンツ全体の意味構造を理解しようとしており、画像まわりのテキスト設計がそのまま評価対象になります。
動画と音声の文字起こし・字幕の重要性
動画や音声コンテンツはAIが直接「視聴」するわけではありません。その内容を理解するためには文字情報が不可欠のため、動画SEOでは字幕・トランスクリプト(文字起こし)の整備が最重要ポイントとなります。
GoogleはすでにYouTubeの自動字幕をインデックス化しており、動画内の台詞や説明が検索結果に反映されるケースも確認できています。音声や映像で伝えた情報も最終的にはテキスト化によるSEOが欠かせないという証です。
Podcastや音声配信でも同様で、番組概要欄やトランスクリプトの設定が検索上の認識精度を高めます。音声メディアはSEOに弱いと思われがちですが、適切な文字情報を補えば十分にAI最適化の対象になり得るものと考えます。
構造化データとAI理解の融合
Googleは画像や動画にも構造化データを設定できるようにしており、ImageObject・VideoObject・AudioObjectなどのスキーマが推奨されています。これらのタグを使って画像や動画の内容・制作者・公開日・ライセンス情報などを正確にマークアップするとAIはより精密にコンテンツを理解できます。
たとえばレシピ動画にVideoObjectを設定すると、Googleはその動画について料理手順を解説する内容として分類します。同様に企業紹介動画にはOrganizationスキーマを組み合わせるとブランドの公式情報として認識されやすくなります。
構造化データはAIとの共通言語でありページのどこに、どんな意味の情報があるのかを機械に伝える処方がマルチモーダルSEOの基礎となります。
ユーザーシグナルとの連動
マルチモーダル時代のSEOではクリック率や滞在時間だけでなく「どの情報形式でユーザーが満足したか」も評価に含まれ始めています。検索結果でAIが生成した要約文に画像や動画が引用されるとユーザーの理解度が高まり、結果的にポジティブな評価シグナルが蓄積されます。
そのためテキスト・画像・音声・動画が分断されていては不十分で、ページ全体を一つのストーリーとして設計し、複数のモードが互いに補完し合う構造がAIにとっての高評価コンテンツとなります。
E-E-A-Tの概念はより多次元的に
マルチモーダルSEOではE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)も表現方法が多様化しています。動画での実演は「経験」になり、音声インタビューが「専門性」を補強するなど、各モードがE-E-A-Tの一部として機能するようになりました。
テキストだけで専門的に見せるのではなく、発信者のリアルな声やビジュアルを通して人の信頼感をAIに伝えることが、これからのSEOにおける新たな信頼構築の方法です。
マルチモーダルSEOの実践ステップ
マルチモーダル検索の対応には単に画像や音声の最適化だけでは不十分です。そのためにはサイト全体をAIに理解しやすい構造に整える方法を知りましょう。この章では実際のSEO運用に落とし込むための基本的な3ステップを紹介します。
ステップ1:コンテンツ形式の整理と役割分担
まず最初はサイト内に存在するコンテンツ形式の洗い出しです。テキスト・画像・動画・音声それぞれの役割を明確にして目的に応じて最適な配置を考えます。
- ブログ記事
テキストで詳細説明を行い補足に画像を配置 - サービス紹介ページ
代表者インタビュー動画を設置して信頼性を強化 - FAQページ
短い音声クリップで回答を再生
あくまでも一例ですが情報形式ごとに役割を分担させるとAIはページ構造を理解しやすくなります。
さらに各形式を孤立させないように計らいます。画像には説明文・動画には字幕・音声には要約文を併記。こうしたテキストによる補完的な関係を与えるとAIは一貫した文脈として読み取れるようになります。
結局はテキストなんですよね・・・。
ステップ2:意味づけとタグ設計(メタ情報の整備)
AIに情報の意味を伝えるにはページ内タグ構造の最適化が欠かせません。見出し階層(h2・h3)を正しく使うだけでなく画像・動画・音声にはそれぞれ意味を持たせるメタデータを設定します。
代表的なものとして以下のような構造化データが挙げられます。
ImageObject:画像の内容、著作者、使用目的などを明示VideoObject:動画の説明文、長さ、公開日、サムネイル情報AudioObject:音声データのトピック、話者、録音日
これらを設定するとAIは「どのモードの情報がどんな意図で掲載されているか」を把握しやすくなります。さらにメタタイトル・メタディスクリプション・OGP(SNS共有情報)なども整備すれば検索・SNS・AI要約のすべてで一貫した理解を促せます。
ステップ3:クロスリンク構造でAIに関連性を伝える
マルチモーダルSEOでは情報の「点」ではなく「線」でのつながりが重要と考えます。たとえばテキスト記事から関連する動画へのリンクを設置し、動画の概要欄にも記事URLを掲載して相互補完させます。
このクロスリンク構造でAIは複数の情報モードを関連づけて理解し、結果として検索結果のAI要約や画像付き回答で複数の要素が同時に引用される可能性が高まります。
内部リンクの整理ではユーザーが自然にたどる導線を意識しましょう。AIは行動データからサイト構造を推定するため、UXの良いサイトは結果的にAI理解にも有利になります。
AI最適化は意味の設計から始まる
マルチモーダルSEOは単なるメディア活用ではなく意味を設計する作業ともいえます。AIが画像や音声を認識しても、それが何を意味するのか不明確であれば適切に評価されません。
これは人間でも同じですね。
そのためコンテンツ制作時には「この画像は何を説明しているのか」「この音声はどの質問に答えているのか」を常に意識します。AIに正しく学習されるサイトは構造が整っているだけでなく情報同士の意図が明確です。
PDCAで精度を高める
マルチモーダルSEOも従来のSEO同様に一度整備して終わりではありません。Google Search Console(GSC)・Google analytics(GA4)・YouTube Studio・Bing Webmaster Toolsなどのデータを活用し、どの形式のコンテンツが検索に反映されているかを定期的に確認しましょう。
画像検索でのクリック率・動画のインプレッション・AI要約での引用傾向などを分析すれば改善すべきポイントが見えてきます。これを継続的に繰り返してAIにもユーザーにも理解される学習し続けるサイトを構築していきましょう。
深堀りするなら有料SEOツールも使うとよいですが、基本的な処置だけなら無料で使えるツールで十分です。
よくある個人ブロガーの悩みの中には無料版ではデータが大雑把すぎるけど、有料版だと詳細は得られるも月額コストが痛いという板挟みがあります。
そんな場合は何も言わずにラッコキーワードの「ライトプラン」が個人的にはおすすめです。
キーワード・競合調査はともかくAIによるコンテンツ作成補助もあります。
今後の展望とAI検索との融合
これまでのSEOは「キーワードを中心としたテキスト戦略」でしたが、これからは「意味・意図・文脈」を多層的に理解させる戦略へと転換していきます。この変化の先にあるのがAI検索との融合です。
AI Overviewとマルチモーダル理解の融合
Googleの「AI Overview」(旧SGE)は検索結果をAIが要約して提示する仕組みですが、その根底にはマルチモーダル技術が組み込まれています。AIは単にテキストをまとめているのではなく画像・動画・構造化データなど複数の情報形式をもとに回答を生成しています。
たとえば旅行先を調べたときに地図・写真・口コミが同時にAI回答に表示されるのは、これらの要素がAIによって意味的に結びつけられているからで、AI Overviewがマルチモーダル検索の完成形のひとつとする証左ともいえます。
検索結果ページについて今後はテキスト中心のリンクリスト一覧形式は後方に追いやられ、まるでウェブサイトのようなAIの再構成によるマルチメディアページへと進化していくでしょう。
ChatGPT・Geminiなど生成AIとの接続
ChatGPT・Perplexity・Geminiなどの生成AIは検索エンジンに代わる情報経路として定着しつつあります。これらのAIが今後さらに進化するポイントとしては、マルチモーダル情報の理解と引用精度の向上です。
たとえばChatGPTは画像や音声をそのまま解析して質問の意図を理解したうえで回答を生成します。Geminiも同様にテキストと画像を組み合わせたクエリ処理を行って検索の文脈理解力を強化しています。
まさにAIが検索の代理人のような存在となるような未来が見え隠れします。今後のSEOではAIがどのように情報を読み取り、どのような形式を好んで引用するかを意識した設計が求められます。
コンテンツの意味的な価値が評価される時代へ
これからの検索評価では「どのキーワードを含むか」よりも「どんな意味を伝えているか」が重視されます。AIは文脈を理解するため単語の羅列ではなく、因果関係やストーリー性を持った情報を好むようになるでしょう。
たとえば「防災グッズ おすすめ」という単語の組み合わせよりも「地震に備えておきたい5つの防災アイテム」のような目的が明確な文脈のほうが、AIに理解されやすいという考え方です。
つまりSEOは言葉を最適化する作業から意味を最適化する作業へとシフトしていくものと考えます。
マルチモーダルSEOがもたらす新しいUX
ユーザー体験の面でもマルチモーダル化は大きな変化を生み出します。検索結果にテキスト・画像・動画が組み合わされると、ユーザーは「調査・確認・チェック」から「理解・学習・問題解決」へ検索目的がステップアップします。
たとえばレシピ検索の際は材料リスト・調理手順・動画デモ・AIによる代替提案が一度に提示されるようになればユーザーの行動は劇的に短縮されます。これこそがAIによる検索体験の最終系に近いものかなと推測しています。
この流れの中でコンテンツ制作者は検索でクリックさせるより、AI経由で価値を届ける視点が重要です。
AIが推薦する時代に備える
AIが自らの判断で「この情報が信頼できる」「このブランドが適切」と判断してユーザーに推薦するケースが増えてくるとしたら・・・。そうなると検索順位よりAIにコンテンツを採用される競争となります。
となるとE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)のデジタル的な明示がますます重要になります。著者情報・企業サイトの透明性・出典・構造化データによる根拠などがAI推薦の基準になります。
したがってSEO担当者はAIが「この情報を引用する価値がある」と判断してもらえるよう信頼を設計する役割を果たさねばなりません。
まとめ
マルチモーダル検索はAIが「見る・聞く・読む」を統合的に理解する新しい検索体験であり、テキストSEOの時代から一転して画像・音声・動画を含めた意味を最適化する時代へと移り変わっています。
AIが情報をどう理解し、どんな文脈で引用するか仮説・検証・改善の繰り返しがこれからのSEO成功の鍵です。
