SEO対策を外部業者に依頼する際、気になるのは費用対効果です。
提案書や見積書の妥当性や専門用語の理解、さらには業者のスキルや実績の評価もしづらい面があります。
特に法人のWeb担当者にとって、自社のためにSEOを担ってくれる業者の選定は、事業への影響も大きいため、かなり神経を使うと考えます。
このような背景から本記事では、SEOの見積書に潜む典型的な落とし穴と業者選定で失敗しないためのチェックポイントを、実務経験者の視点でお伝えします。
今後の外注判断や見積もり比較に、ぜひ、お役立てください。
SEO対策の見積書に潜む3つの典型的な落とし穴
SEO外注を検討する際、多くのWeb担当者が見落としがちな落とし穴があります。
ここでは実際の見積書をもとに、注意すべき3つのポイントを具体的に解説します。
1. 作業項目が抽象的で成果が不明瞭
SEO対策の見積書でよくあるのが、「内部対策一式:月額○○円」「外部対策:月額○○円」といった曖昧な表現です。
こうした見積書では、どのような施策が具体的に実施されるのかが不明確であり、成果が出なかった際の説明責任も曖昧になります。
たとえば「内部対策」と一括りにされていても、HTMLタグの修正、パンくずリストの最適化、構造化データの実装など、作業内容は多岐にわたります。
それにもかかわらず「内部施策対応」とだけ記載されている場合、発注側では進捗や作業の内容を把握できません。
成果に対する明確な説明がなければ、施策の妥当性を判断する基準も持てず、信頼性に欠ける提案となってしまいます。
2. 月●件の記事作成でごまかされる成果設計
「月に●本の記事を作成」と明記されていても、それだけで成果が保証されるわけではありません。
問題なのは、記事の本数が納品物としての成果と誤認され、検索順位やアクセス増加との関係が明示されていないケースです。
たとえば5本納品されても、キーワード選定が甘く、検索ニーズに合っていなければ意味がありません。
コンテンツSEOの本質は、検索意図を的確にとらえた良質なコンテンツを届けることです。
記事数を成果の指標とする提案があった場合は、「どのようなキーワード戦略で、どのような順位改善を見込んでいるのか」をセットで確認しましょう。
3. 初期費用・運用費用の内訳が不透明
初期費用として数十万円を請求されたにもかかわらず、その内訳が「戦略設計」「調査分析」などの一言で済まされている見積書も散見されます。
また、月額費用の中身についても、「レポーティング含む」などの表現に留まり、実際の改善施策が不明瞭な場合があります。
このような場合、仮に納品物があっても、費用対効果が測れず社内の稟議も通しづらくなります。
また運用フェーズにおいては「どのような仮説のもと、どのような施策を実行するのか」「PDCAをどう回すのか」といった説明が不可欠です。
費用が高額な場合ほど、見積書の明細には慎重に目を通し、具体性のない部分は契約前に必ず確認しましょう。
失敗しないSEO業者を見極める5つのチェックリスト
SEO対策を外注する際、業者の選定を誤ると、予算や時間を無駄にするだけでなく、自社サイトの検索評価を下げるリスクも伴います。
ここでは、toB提案の現場経験をふまえ、実務で本当に有効だった業者選びのポイントを、5つのチェックリストとして紹介します。
1. 担当者は自社でSEOメディアを運用しているか
提案してくる担当者が、実際に自社サイトでSEO集客を実践しているかどうかは大きな判断材料となります。
自身のメディアを持っている担当者は、理論だけでなく実行と結果の蓄積があるため、現場に即した提案が可能です。
一方、営業資料だけを使って話す営業担当の場合、実際のSEO運用経験が浅いかゼロで、テンプレート的な提案に終始するリスクがあります。
商談時には「ご担当者自身は、自社でどんなSEO施策を実践していますか?」といった質問をぶつけるのも有効です。
2. コンテンツSEOとテクニカルSEOの両面を理解しているか
信頼できる業者は、「コンテンツSEO」と「テクニカルSEO」の両面からサイトを評価・改善します。
コンテンツSEOは、検索意図に合った記事制作や情報設計を行う領域。
一方、テクニカルSEOは、サイト速度、内部リンク構造、HTMLの最適化、モバイル対応など、クローラビリティやユーザビリティに関わる部分です。
いずれか一方に偏った提案は、SEO全体のバランスを崩し、成果につながりにくくなります。
「どちらの領域も対応可能か?」「それぞれにどんな改善案を出せるか?」といった観点でチェックしましょう。
3. KPI設計が具体的か
良質なSEO提案は、必ず具体的なKPI(重要業績評価指標)とロードマップが提示されます。
「半年以内に主要キーワードの順位を10位以内に」や「3か月で自然検索流入を月間●件増やす」など、数値目標と到達時期が明示されているかどうかを確認しましょう。
あいまいな表現、たとえば「集客力を上げる」「検索評価を高める」などでは、進捗管理や評価ができません。
BtoB領域では、リード獲得やサービス問い合わせにつながる検索キーワード群を選定し、それに基づくKPI設計が求められます。
4. 順位保証や被リンク●本などの表現がないか
「Google検索で5位以内を保証します」「月に50本の被リンクを張ります」などの表現が見られたら、即座に疑ってかかるべきです。
順位保証はGoogleのガイドライン違反であり、不自然な手法(リンクスパムや隠しテキストなど)によって達成された場合、将来的なペナルティのリスクがあります。
また、リンクの「本数」を売りにする業者は、質より量を重視する傾向があり、ブラックハット手法が含まれている可能性が高くなります。
健全なSEOでは、ナチュラルな被リンクの獲得や、既存コンテンツの強化といった地道な作業が基本です。
「簡単に成果が出る」といった甘い言葉には、裏があると考えるのが妥当です。
ひとことで言えば前時代的なSEOで、今はもう通用しづらい手法になります。
5. 契約形態・運用体制が明確に説明されているか
SEO対策は継続的な取り組みが前提です。そのため、契約期間・更新条件・途中解約時の取り決めなど、契約形態が明示されていることは必須です。
また、運用体制として「誰が・どの業務を・どの程度の頻度で」対応するのかが示されていなければ、稼働の中身がブラックボックスになってしまいます。
実際の現場では「毎月のレポートは来るが、施策提案がない」「コンテンツは納品されるが、キーワード選定の理由が不明」などの声もあります。
こうした状態を防ぐには、業者側から体制図や担当者一覧、稼働の工程表などが提示されるかをチェックしてください。
以上の5点は、提案内容を見抜く上での最低限のチェックリストです。
SEO業者選定の際には、これらを参考に冷静かつ慎重に判断することで、長期的に成果につながるパートナーを見つけることが可能になります。
toB向けSEO提案の現場で見た成功と失敗の分かれ道
SEO対策を外部に委託する際、成果を左右する要素は、見積書や契約内容だけではありません。
営業段階の提案の質、社内体制との相性、目標に対する共通認識などのバランスが取れているかが、プロジェクト成功の鍵を握ります。
この章では、実際の法人案件で見た成功事例と失敗事例を取り上げ、SEO業者選定における注意点を明らかにします。
成功事例:営業段階で戦略レベルの提案が出たケース
ある製造業は、Webからのリード獲得強化を目指して、SEO業者を検討していました。
複数の提案を受けた中で選ばれた業者は、検索ニーズに応じたホワイトペーパー戦略と競合比較ページの整備に言及。
さらに、Google Search ConsoleとGoogleアナリティクスのデータを分析し、既存コンテンツの改善余地も数値で提示していました。
営業資料にはKPIモデルも記載されており、過去の実績においても「月間セッション数」「資料DL数」「CV率」の改善が数式でつながっていた点が、経営層の納得を得る大きな要因になりました。
この企業はその後、社内のマーケティング担当者との連携体制を整え、3ヶ月でコンバージョンが2倍に。
成果が上がった背景には、営業段階から経営目線に立った戦略設計が存在していたことが大きく影響しています。
失敗事例:コスト重視で業者を選んだ結果ノウハウが残らなかった
一方、失敗事例として典型的だったのは、安さを最重視したケースです。
とある人材系の企業は、月額5万円でSEO対応可という価格に惹かれて、業者と契約しました。
見積書には「記事作成」「キーワード選定」「順位改善」などの項目が並んでいましたが、詳細な作業内容や改善計画は提示されていませんでした。
納品された記事はすべて外注ライターによるテンプレート文で構成されており、ブランドや事業特性が反映されていない状態。
レポートはあったものの、記載されていたのは順位表のみで、「なぜ順位が変動したか」「どのページが強化対象か」などの解説はありません。
当然のように成果は出ず、社内にはSEOの運用ノウハウも残らなかったため、コストだけが出て行った事実だけが残りました。
このケースでは、単価の安さだけを基準にした選定が失敗の原因であり、見積書に書かれていない項目を見抜けなかった点も、大きな反省点となっています。
高すぎるコストも考えものですけどね・・・。
成功の分かれ道は提案力と実行力のセット
複数の案件を見てきた中で明らかになったのは、提案力だけでは成果につながらないという点です。
たとえ営業資料が優れていても、実行フェーズで社内と噛み合わなければ、成果は生まれません。
実行力に優れたとしても、戦略がないまま作業を重ねるだけでは、数値改善につながらないのです。
見積書に書かれた内容と、実際にどのように動いてくれるか・・・。
このギャップを埋めるためには、業者との初回打ち合わせ時点で以下のような質問をしてみるのが効果的です。
- 過去の成功事例は、どのような施策で成果が出たのか?
- 社内の誰が、どのような体制で対応するのか?
- レポートや報告の頻度、内容のレベルはどれくらいか?
- KPIの設定や戦略提案は契約前にもらえるか?
これらの質問に対して、具体的かつ明確な回答が得られるかどうかが、成功の分かれ道となります。
「見積書+提案資料+初回対応」で総合的に判断を
見積書の内容だけで業者を判断するのは、情報が不足しています。
提案資料・初回対応の質・社内体制とのフィット感も含めて、複合的に評価する必要があります。
SEOは数ヶ月単位での継続作業になることが多いため、長期的な視点をもって伴走してくれる業者かどうかを見極めることが肝心です。
見積書の内容と、それを支える提案・実行体制に一貫性があること。
この視点が、失敗しない外注パートナー選定において、最も重要な判断軸となります。
まとめ
SEO対策の見積書には、専門知識がなければ見抜けない落とし穴が数多く存在します。
「成果の見えにくい作業項目」「レポートのみの運用」「順位保証や大量リンク提供」など、費用対効果の観点から再確認が必要な項目も少なくありません。
toB領域におけるSEO外注では、戦略設計・実行体制・レポート精度が一体化しているかが鍵となります。
本記事で紹介したチェックリストや事例が、自社にとって本当に価値あるパートナー選び一助となれば幸いです。。